研究者が「真の研究」に集中できる環境を実現するために
北海道大学大学院医学研究院では、臨床・教育・研究を担う研究者が限られた時間の中でも高い研究成果を生み出せる環境を実現するため、「ひと」「AI/DX」「しくみ」の三位一体による研究環境整備を推進しています。本取り組みの最終目標は、研究者一人ひとりの「真の研究時間」の確保と質の向上を通して、多くの研究成果を生み出すことです。
なぜ研究環境整備が必要なのか?
近年、診療業務の高度化、教育負担の増大、各種申請書の作成や事務作業の増加により、多くの研究者が研究に割ける時間を十分に確保できない状況にあります。日本全体で医学研究力の低下が懸念される中、広域医療圏を抱える北海道では、研究と診療の両立が特に困難であり、研究環境改革は喫緊の課題となっています。
令和7年度からのAMED医学系研究支援プログラムに採択された本事業では、こうした業務負担を減らして「真の研究時間」を増加させると同時に、様々な支援を通じて研究の質を高めることが研究力強化の近道であると考え、医学研究AI支援部門を立ち上げて支援活動を展開しています。AMEDの支援期間終了後にも持続できる体制の構築を最初から念頭において活動を進めています。

研究者が受けられる主な支援内容
1.人的支援(ひと)
研究活動を直接・間接に支える人材を配置し、研究者の周辺業務を軽減します。
- 研究データ解析支援(画像/動画、電子カルテ、シングルセル等のAI解析:特にデータ駆動型研究やリバーストランスレーショナルリサーチの支援に注力)
- AI研究に必要な教師データ作成、アノテーション支援
- 論文作成支援(文献検索、図表作成、英文作成補助)
- スライド・申請書作成支援
- TA/RAによる実習・教育支援

これにより、研究者は研究構想・計画の立案や解析方針の決定、論文の本質的議論に集中できます。
これらの支援は一時的な代行ではなく、研究者自身がAIやデータ解析を使いこなせるようになることを目標とし、次世代の研究リーダー育成にもつながります。
2.AI/DXによる支援
研究者の思考を加速させる補助輪としてAIをフルに活用し、日常業務に追われがちな研究者が本来考えるべき研究の核心に集中できるよう支援します。
そのため、高性能のGPUを持つワークステーションを院内ネットワークに接続し、大規模言語モデル(LLM)を動作させることで、情報漏洩リスクを抑えたままでの医療情報AI解析を実現し、診療・研究を幅広く支援します。
- データベース入力支援(NCD、J-OSLER等)
- 手術動画の編集・解析支援
- 病歴サマリー/手術記録の作成支援
- 条件を満たす症例の抽出支援
このほか、ローカル/クラウドのLLMを用いて、
- アバターやAI作成資料を用いた患者説明支援
- 研究・診療サマリー作成支援
- 講義・学会スライド作成支援
- 講義資料の英語化、日本語化(字幕、音声)
- 学生の自己学習を支援するAI開発

といった支援も行います。
医学研究AI支援部門に所属するAIに詳しい研究者やエンジニアが、各研究者のニーズに合った支援AIの開発を手伝うだけでなく、各教室に1人AIに詳しい人材を育成するためのお手伝いをします。
3.制度・仕組みによる支援
研究を継続的に支えるための制度的基盤を整えています。
- 医学研究AI支援部門の設置(連携研究センター「フラテ」内に配置)
- 研究専念時間の導入
- 遠隔医療・DXによる移動時間削減
- 異分野交流を促進する「サイエンス・カフェ」の設置
- 国際交流・国際共同研究の支援

これらにより、研究者の流動性と挑戦性を高め、分野横断的研究の創出を促進します。
以上の取り組みは、研究時間や成果の変化を継続的に確認しながら、実効性を検証・改善していきます。
私たちが目指す研究環境
- 研究者が「忙しさ」ではなく「科学的な問い」に向き合える環境。
- 自由に思索し、異分野と交わり、世界へ発信できる研究拠点。
北海道大学大学院医学研究院は、研究者とともに進化する研究環境を構築し、次世代の医学研究を切り拓いていきます。
本学で確立される研究環境モデルは、医学分野にとどまらず、他分野や他大学にも展開可能な先進的モデルとして、日本全体の研究力強化に貢献することを目指しています。